再熱除湿
105. 再熱除湿

  最近,空調機メーカーより相次いで新製品エアコンとして発表されている,再熱除湿エアコンについて説明する.除 湿機能は,冷房運転時には必然的に顕熱冷却と潜熱除去を同時に行っており,意識的にSHF をコントロールすること は行われていなかった.
    しかし近年,省エネと快適性の二つの側面から見直されてきた.省エネ性をup するためにイ ンバータ搭載エアコンでは,部分負荷運転時にインバータ周波数を下げることにより,蒸発器において吸い込み空気温 度と冷媒蒸発温度の温度差が小さくなり,COP は上昇するが湿度が取れなくなり,湿った環境になり不快になる.
    一 方,湿度を取るためにインバータ周波数を上げたり,室内送風機の風量を少なくして冷媒蒸発温度を低く保つと,今度 はエアコンからの吹き出し温度が低く,寒く感じこれもまた不快となる.
    
    ここで登場したのが冷媒再熱除湿エアコンである.図1 に代表的な冷媒回路を示す.圧縮機で高温高圧に圧縮された ガス冷媒は,四方弁を経由して室外側熱交換器で一部凝縮液化し,二相高圧高温冷媒のまま室外電子膨張弁を通り,室 内側熱交換器に入る.電磁弁EV1 とEV2 は閉となっており,室内側熱交換器に流入した高圧高温の二相冷媒は室内熱 交換器No1 で凝縮液化し,室内電子膨張弁で絞られて低圧低温の二相冷媒となり,室内熱交換器No2 で蒸発ガス化し 再び室外に循環し,四方弁を通って圧縮機に吸入される.この時,室内吹込空気はまず室内熱交換器No2 で除湿冷却さ れて,その後室内熱交換器No1 で再加熱されて低湿度高温空気となって室内吹出空気となる.
    
    この再熱除湿回路における技術課題は,主に以下に述べる4 点がある.
    
1)  室外側熱交換器で高圧高温のガス冷媒を一部凝縮して高圧高温の二相冷媒にするが,その一部とはいくらか,暖房 ぎみ除湿か冷房ぎみ除湿か,何をどう制御するのか.現状では室外側熱交換器の送風機の回転数を室内吹き出し空 気温度によって制御している.
2)  室内側熱交換器にある室内電子膨張弁からの冷媒音をどう消すか.これはメーカーごとに異なるが,代表的な方法 として低騒音弁を開発しており,入口二相の気泡と液の粒子を細かくして消音効果を出しているものがある.
    
3)  通常冷房運転から再熱除湿運転にモード変更するタイミングと,その時の圧縮機周波数の制御をどうするか.通常 冷房運転では,電磁弁EV1 とEV2 が開いており,室内電子膨張弁は閉じているため,室内熱交換器No1 とNo2 の 両熱交換器が蒸発器になっている.ところが再熱除湿運転では室内熱交換器No2 のみが蒸発器であり,このモード 切り換え時に圧縮機の周波数も連動して変化させなければ,連続的能力制御が達成できなくなる.
4)  室内側熱交換器No1 とNo2 は従来の狭い空間に押し込まれているため,温風と冷風が箱体内で混じりあい,いわ ゆる露飛びが発生することがある.これを避ける風路系の設計と温度分布を最適設計しなければならない.