テクスチャー(texture)
テクスチャー(texture)

  テクスチャー(texture)は織物・服地,皮膚,木材,岩石および食品などに対する人の触感を表わす言葉の総称とし て用いられている.
    我々は服地や織物に対して「目の粗いテーブルクロス」,「さらさらした切れ地」,「ふんわりとした 毛皮コート」といったような多様な言葉で服地のテクスチャーを表現している.このように,服地のテクスチャーは 「目の粗さ」,「さらさら感」,「ふんわり感」などの属性で評価されていることになる.また,これと同様に皮膚・木 材・岩石などのきめ,手触り,感触などの属性もテクスチャーの特徴を表わしている.たとえば,「彼女の皮膚は絹の ようにきめがなめらかだ」という表現は「彼女の肌に関するテクスチャー」の一部を評価していることになる.このほ かにも,肌のテクスチャーを表わす語彙には硬さ,弾力性,湿り,かさかさ感などが挙げられよう.また,他人との交 際の課程で,精神的な「肌触り」を感じることもあるので,テクスチャーは我々の心の状態を表現するのにも用いられ ている.また,組織・構成・構造・組立(structure)などの同義語として用いられる場合もある.
  食品の場合には「テクスチャー」と「食感」がほぼ同義語として用いられ,外観,味,香り,温度などとともに,品 質評価の主要因となっている.たとえば,うどんやスパゲッティなどの「こし」の強さをどのように決めるかは,コン ビニを対象にした商品開発の主要課題となっているし,特に,蕎麦のこしは茹であげた直後から急激に消失するため, こしを長期間維持するための方法は難問題として残されている.
  これまで,食品のテクスチャーを客観的に計測・評価するための膨大な研究が報告されており,人の歯による咀嚼の 過程を人工的に模倣した「テクスチュロメーター」も考案された.この測定器ではテクスチャーの属性として,「硬さ」, 「割れやすさ」,「そしゃく性」,「ガム性」,「付着性」,「粘性」などのパラメータを計測できるとして注目を集めた.し かし,食品を対象とした計測結果がヒトによる官能評価結果と必ずしも一致しない場合がある.このため,現在では主 要なパラメータを計測するために多様な計測装置が考案されている.
    「レオメータ」は工業材料を対象とした万能試験器と同様の機能を有する破断・粘弾性測定装置であり,汎用装置と して利用されている.他方,パン生地の標準的計測装置として,「アミログラフ」や「ファリノグラフ」が世界的に利 用されており,また,米飯のテクスチャーを測定する装置として,「テンシプレッサー」が開発されている.
  いずれにせよ,これらの機器測定結果と官能評価結果との対応を明らかにする必要があり,「食品感性工学」の分野 では,これらの問題を解決する新しい手法の開発が進展している.
  その結果,どうやらヒトは酸っぱい食べ物について は固く感じているようであり,食品のテクスチャーには力学的パラメータのみでなく,成分も関与していることが指摘 されている.

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