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WEEE指令/RoHS指令
                             

  WEEE指令(Waste Electrical and Electronic Equipment:廃電気電子機器指令)および、RoHS指令(Restriction of the use of certain Hazardous Substances in electrical and electronic equipment:電気電子機器の有害物質使用制限指令)は、 欧州連合(EU)における共通の規制「欧州指令」中の電気電子機器分野における廃製品のリサイクル指令(WEEE)および有害 物質の使用規制(RoHS)である。欧州に製品の輸出を行う日本企業にとっては輸出が制限される重要な規則である。
 EUの環境政策は厳しく規定されている。EUの環境に関する基本理念は「欧州共同体を設立する条約(EC条約)174 条(環境政策の目的)で明確に規定され、環境政策は①環境の質の保全および保護と向上、②人の健康保護、③天然資 源の賢明・合理的利用、などを掲げ、環境政策の原則として①予防および保全の原則、②環境破壊の根源を優先是正、 ③汚染者負担の原則、④個々の地域の多様性を考慮した高い保護水準、などを挙げている。
 欧州理事会と欧州議会の調停委員会は、廃電気電子機器(WEEE)の法規制、ならびに有害物質使用期限(RoHS)に に関する二つの指令の内容について長期にわたり議論してきた結果、2002年10月11日に合意。2003年2月13日付け欧 州官報(OJL037)で、本指令が正式に発効された。各加盟国は2004年中の国内法発発効の作業を経て、今後WEEE指令 によるリサイクル実施義務が2005年8月13日、RoHS指令による有害物質使用制限が2006年7月1日となっており、輸 出をする日本企業は早急な対応を迫られている。
  EUでは廃電気電子機器(WEEE)が、年間600万t(20kg/人)あり、毎年5%の増加傾向を示している。WEEEの90% はそのまま埋め立て、または焼却され、埋め立てによる鉛の40%、焼却施設による鉛の50%はWEEEに起因している。
  WEEE指令の理念は、廃電気電子機器の予防であり、生産規定ではない。そのため、リユースやリサイクルを推奨す るために、電気電子機器生産者の廃棄物に関連した製造物責任を強化することである。
  WEEE指令が適用される製品は特定の製品ではなく、表1に示す製品10種類のカテゴリーに分けられた製品全般に 対してである。ほとんどの電気製品がこの指令の対象となる。
 
表1 WEEE指令の対象製品
 
カテゴリー
製 品 (例 示)
1
大型家電機器
冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、エアコンなど
2
小型家電機器
電気掃除機、アイロン、トースター、電気カミソリ、時計など
3
IT・通信機器
パソコン、プリンター、コピー機、電話機など
4
民生用機器
ラジオ、TV、VTR、HiFi機器など
5
照明機器
蛍光灯、ハロゲランプなど
6
電気・電子工具
電気ドリル、旋盤、スライス盤、芝刈り機など
7
玩具、レジャー用機器
ビデオゲーム、コイン・スロットマシンなど
8
医療用機器
透析装置、放射線療法機器、心電図測定器、人工呼吸器など
9
監視・制御機器
火災探知機、サーモスタット、工場設置の監視測定機器など
10
  
固形製品用自販機、貨幣用自動ディスペンサ、ほか

 
 
表2 WEEE指令におけるカテゴリー別の生産者達成義務
カテゴリー
再 生 率
再利用・リサイクル率
1.大型家電機器および10.自動販売機器
80%
75%
3.ITおよび4.民生用機器
75%
65%
その他(2.5.6.7.9.)
70%
50%
8.医療用機器
2008年12月31日まで設定
2008年12月31日まで設定
生産者とは自己ブランドでの製造・販売者、自己ブランドをつけた再販業者および輸入業者
 
生産者※の義務としては、製品の再利用・リサイクルを容易にする設計、生産をしなければならない。また、WEEE からすべての液体の除去と特定の物質、調剤、構成部品を分離処理しなければならない。分離処理の対象には、CFC/ HCFC/HFC/HCなども入る。また、リサイクル処理システムの構築(2005年8月13日まで)や表2に示す 製品カテゴリー別の再生率と再利用・リサイクル率の達成(2006年12月31日まで)の義務を負う。なお、この%は機器 の重量あたりの値である。
 生産者の費用負担では電気電子機器を回収、処理、再生する責任(コスト負担)を負う。指令発効前の製品についても、 生産者は負担分担の取り決めに基づき、そのコスト費用を負担しなければならない。なお、一般家庭の消費者は廃棄する製品を 無料で返却できる。さらに、生産者は各種の情報提供の義務を負う(ユーザーへの情報提供、処理施設への情報提供、生産 者登録、回収・再利用・リサイクル・再生量・回収品の輸入量報告など)。
 一方、RoHS指令は、WEEE指令のカテゴリーから8.医療用機器と9.監視・制御機器を除き、電球と家庭用照明器具 が追加されている。RoHS指令ではカテゴリーのみが指定されており、製品例示はない。
 なお、適用除外の例として、禁止日前に上市した機器の再使用、および修理用のスペアパーツに関しては、旧製品の 製品寿命延長処置であり、廃棄物を減らす効果をもたらすので、除外規定が適用されている。さらに、個々の特定用途の 製品の除外規定もある。吸収式冷凍機の防錆用六価クロムもこの規定に入っている模様である。
 RoHS指令の詳細規定(対象範囲、上市の定義、除外項目の追加、再生・リサイクル目標の監視)は現在検討中であり、 正確に決定したものではない。また、現在最大の関心事は最大許容値としての閾値が決定していないことである。 EU委員会案(均質材料ベースで、鉛・水銀・六価クロム・PBB・PBDEについては0.1wt%,カドミウムについては0.001wt%とする)は出ているが、 決定はしていない。RoHS指令の除外カテゴリー(8.および9.)も対象範囲に含める動きがある。
 
(注)本解説は平成16年末時点の情報*を元にしています。具体的実施内容につきましては、WEEE指令および RoHS指令の最新情報を参照するようにお願い致します。
(EU公式サイト例 http://europa.eu.int/scad_en.htm,
http://europa.eu.int/comm/environment/waste/weee_index.htm,
http://europa.eu.int/eur-lex/en/index.htmlなど)
 
参考文献
1)日本機械輸出組合 衣笠和郎:「EUの廃電気電子機器(WEEE)及び特定有害物質(RoHS)指令の 最新動向」,環境と新冷媒国際シンポジウム2004,pp.41-45,
2)日本機械輸出組合ホームページhttp://www.jmcti.org/
3)日本電子(株)ホームページ http://www.jeol.co.jp/  他
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