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メタボリック・シンドローム
                             


  最近,よく耳にするメタボリック・シンドローム(代謝症候群)は,内臓脂肪型肥満にプラスして中高年がかかりや すい生活習慣病の高血糖・高血圧・高脂血症のうち2 つ以上を合併した複合生活習慣病のことである.ひとつひとつの 要素が軽度でも,これらの危険因子が重なるとひとつだけの時より互いに影響し合い,動脈硬化を促進することがわか っていて,動脈硬化が進むと「心筋梗塞」や「脳梗塞」などの重篤な病気を引き起こす.メタボリック・シンドローム の人は,そうでない人に比べ約3 倍も心筋梗塞や脳梗塞を発症しやすく,また,正常高値の血圧は本格的な高血圧へ移 行しやすいといわれている.
 1980 年代前半まで,生活習慣病の三大要素(高血糖・高血圧・高脂血症)と内臓脂肪型肥満とは,ほぼ同時進行で 悪化の過程をたどるが,あくまで個別の事象であるとの見方が主流だった.しかし,それらの密接な相関がReaven GM によって「Syndrome X」との研究名で報告され(1988 年),その翌年にKaplan NM による「死の四重奏」と題する研究 報告がなされたのを契機に,蓄積された内臓脂肪を“主犯”とする研究が活発化した.
 肥満には,女性に多く見られる皮下脂肪タイプと,中年男性に多く見られる腹部の腸間膜や肝臓に脂肪がたまる内臓 脂肪タイプがあるが,メタボリック・シンドロームに関係するのは内臓脂肪である.この脂肪細胞は細胞分裂をせず一 つ一つの細胞が大きくなり,インスリンの働きを悪くする悪玉アディポサイトカインという内分泌物質を分泌する.イ ンスリンは全身の細胞が血液から糖を取り込む働きをするが,この悪玉アディポサイトカインがその働きの効きを悪く する.インスリンの効きが悪いため,血液中の糖が増えて糖尿病になったり,膵臓からのインスリンが大量に分泌され るため,腎臓でのNa(ナトリウム)の再吸収が促進され高血圧となったりする.
 このようなことから,2001 年にWHO(世界保健機関)が「代謝症候群」という名称とその診断基準を発表したこ とにより,一般に知られるようになった.メタボリック・シンドロームの診断基準は,WHO,アメリカ合衆国,日本で異なっている. 表1に日本の診断基準を示す.
 
表1 日本のメタボリック・シンドロームの診断基準
項 目基 準
腹部肥満ウエスト周囲径 男性85 cm/女性90 cm
高脂血症中性脂肪150 md/dl 以上            
HDL コレステロール値40 md/dl 未満の一方または両方
高血圧収縮期血圧130 mmHg 以上
または,拡張期血圧85 mmHg 以上
高血糖空腹時血糖110 md/dl 以上

 厚生労働省の調べでは,40 ~ 74 歳の中高年世代5700 万 人のうち,2000 万人近くがメタボリック・シンドローム とその予備群で,特に中高年男性では2 人に1 人が該当す る.このようなことから,現在進行中の医療制度改革の一つとして,検診がメタボリック・シンドロームに着目したも のに変わっていく.
 メタボリック・シンドロームにもっとも大切なのが,摂取カロリーである.消費カロリー(基礎代謝や,日常生活, 運動などで消費したカロリー)が摂取カロリーよりも少なければ脂肪として体に蓄積され,メタボリック・シンドロー ムになる可能性が高くなる.日常生活で注意するべきことは
・規則正しい食事                  ・適正な体重を維持
・バランスの取れた食事               ・毎日適度な運動
・脂肪,塩分,糖分の摂り過ぎに注意         ・禁煙
・お酒を飲み過ぎない
である.
 体重や腹囲の測定は手軽にできるので,日々自己チェックして,健康に過ごしたいものである.
出 典:産業機械健康保険組合,(165),6―7.
    メタボリックシンドローム対策,(http://meta.ypod.info/).

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