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節電
                             


  東日本大震災以降,東日本だけでなく全国各地で「節電」という言葉が飛び交っている. 「節電ビジネス」「節電ダイヤ」「節電グッズ」など,節電○○は全国的な広がりを見せており,最近では照明の代わ りに「ろうそく」だけで結婚式を挙げる「節電婚」まで登場している次第である.一方,東京電力管内では電車や駅構 内の液晶画面に電力使用状況が表示され,最大供給能力に対して使用電力が何%か見える化することで,ユーザーの節 電意識向上を図っている.6 月下旬には既に35 ℃を超える猛暑日となり,電力使用率が93 %にも達し安定供給に必要 な余裕率の8 ~ 10 %を超え緊張感も増してきた.
 そもそも節電とは,無駄な電力消費を抑えることであるが,同じ意味に捉われがちな省エネとは大きな違いがある. 省エネとは,快適性を落とさないことを前提に電力・ガス・油の使用量を把握して環境面に配慮し,投資費用と回収年 数を加味して使用エネルギーを削減することである.
 一方,節電とは快適性をある程度犠牲にしても,電力の使用をできるだけ抑え,ピーク時間帯に電力需要が発電所の 供給を上回らないように調整することである.電力の使用は,外気温度が上昇する13 ~ 16 時頃ピークを迎える.この 時間帯に使用量を抑えることが節電対策では重要である.
 7 月1 日から始まる節電要請は,大口・小口需要家,一般家庭とも,一律15 %の削減が目標となった.クールビズを はじめ,ライトビズ(照明の間引き)などの手法で取組が進められる中,特に企業においては節電することで業務,生 産効率を落とさないよう注意する必要がある.「いつ,どこで,どのような目的で」電気が使われているかを把握し, 削れるところと削れないところを明確にし,従来の省エネ対策+節電でこの夏を乗り切って頂きたい.
 この流れは来年以降も続くと思う,この夏の経験が日本のエネルギー政策を変えるほどの大きな取組になることを期 待したい.
 
 ●参考 節電対策例(事務所ビル)
 ① 照明器具の間引き(半分程度消灯しても机上で450 ルクス程度確保を目安).これだけでも一般の事務所ビルでは10 % 以上の節電効果が見込める.
 ② 共用部では温水便座・ハンドドライヤー・電気温水器のスイッチOFF.
 ③ エアコン設定温度28 ℃の徹底,熱交換器の洗浄,こまめなフィルタ清掃.
 注)エアコンは,外気温度の上昇に伴い,消費電力が増加する特性がある.暑い日中ほどインバータで回転数を上げて冷房 能力を確保しようとすることも一つの要因である.昨今では,省エネチューニングというサービスを始めたメーカーもあ り,暑い時間帯でも,消費電力をカタログ掲載値より低減し,確実な節電対策が行えるという.作業も1 時間程度で完了する.※詳細はメーカーへお問い 合わせください.

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