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デマンド監視
                             


  高圧または特別高圧受電の工場,ビルなどでは,電力会社が30 分最大需要電力計の組込まれた電力計を受電設備に 取付け,需要家の電気使用量を計測している.30 分最大需要電力計は,毎時ごと0 分~ 30 分,30 分~ 60 分の30 分間, 電気使用量を計測し,平均使用電力(kW)を算出する.ここで求めた平均使用電力を30 分デマンド値という.
 デマンド監視とは,電力会社が設置している30 分最大需要電力計の上流で電気使用量を監視し,一時的に発生する 最大電力値を事前に予測することである.
 30 分最大需要電力計は1 ヶ月の中で最大値を記憶し表示している.この1 ヶ月の計量期間の中で最大の30 分デマン ド値が,その月の最大需要電力(デマンド値)になる.最大需要電力(デマンド値)を常時監視し,目標値を超えない ようにする装置がデマンド監視装置である.
 前記のとおり,30 分デマンドの最大値が1 ヶ月間の最大値として扱われるため,日々,節電に対応していても,1 回 30 分デマンドが大きな値を示した場合,1 ヶ月間その電力を使用したと見なされる.また図1に示すとおり,電力の基 本料金は,その月以前の過去11 ヶ月間における最大需要電力で決まる.わずか30 分間大きな電力を使用したことで, 1 年間の基本料金に跳ね返ってくる.このような意味で,デマンド監視装置は非常に重要な役割を担う.本来,基本料 金を抑制するための装置であるが,今夏15 %電力削減が実施されている東北・関東では,目標値の変更などを行い, 電力削減に対し,重要な働きをしている.
 デマンド監視装置は,制御対象機器の直接制御,無線LAN による情報発信,データ管理,携帯電話への通報など, 機能も豊富である.個人単位への通報は,事務所の一斉消灯,空調機の設定温度の変更(または停止)などが容易に 行える.
 図2にデマンド監視装置の動作を示す.起点と目標値を直 線で結んだグラフで,電力が直線より下部を推移してくれれ ば,30 分デマンド値に対する制御を行う必要はない.直線 の上部を推移する場合は,なんらかの制御を行わなければ, 目標値を超えてしまう可能性がある.このように,監視開始 時に平均値を超えそうな場合は,デマンド監視装置より電力 オーバーを回避するための警報が段階的に発報される.
 空調に電気式ターボ冷凍機を使用しているビルにおいては, 1 段階目の警報でターボ冷凍機の容量を絞って(たとえば主 電動機定格電流の70 %で運転),デマンド制御を行うことが 多くある.そのため,最近のターボ冷凍機は,デマンド制御 信号を受けて容量を絞る機能を標準装備している製品が多い.
 この状態で,電力削減が不十分な場合,2 段階目の警報で さらに容量を絞る.冷凍機を停止させる設計のものもある. 今後,電力削減の範囲が広がると,ターボ冷凍機のみならず, デマンド信号で冷凍機の容量を絞って,冷却水ポンプの回転 数を下げ,電力削減を行うなど,冷凍設備がデマンド監視に 対応する内容はいろいろ考えられる.
参考:関西電気保安協会ホームページ

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