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 全固体電池  
 
学会誌「冷凍」に掲載された記事を集めました。
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「リチウムイオン電池」は,スマートフォンやiPad などモバイル電子機器の電源と して欠かすことのできない重要な 部品であり,また自動車のEV・PHV の蓄電池として,さらにはスマートグリッドの分 散型発電設備(風力,太陽光な ど)の蓄電池として広範囲に使用されていて,社会に大きな利便性を生みだしている が,大容量化には限界がある.ま た,有機溶媒系の電解液を使用するため,「熱暴走」による異常発熱や発火などを生 じる問題も顕在化しており,安全へ の根本的な解決が課題になっている.
そこで注目されてきたのが「全固体電池」である.これは,電解質(注1)の部分を 「固体電解質」という固体物(金属 など)に置き換えたもので,液漏れや加熱膨張による容器の変形,発火などの事故を 根本から防止できる.
1.「全固体電池」とは
正極と負極を固体電解質でつないだ構造を持つ.正極,固体電解質,負極の材質の組 み合わせや,電極-電解質間の 固体界面接合が良好となるように研究されている.

2.「固体電解質」とは
液体(電解液)に匹敵するイオン伝導性(注2)をそなえた固体.この中をイオンが 高速で移動することで電気が流れる. 固体電解質の場合,実用的なイオン伝導性を得るための温度(高温となる)が課題と なっている.最近の研究では,固体 電解質にヨウ化銀(AgI)を用いて正極を五酸化バナジウム(V2O5),負極を銀 (Ag)で構成した全固体電池に,ナノ粒子 技術を用いることで電池の温度を149 ℃から40 ℃に下げられる可能性が発見されて いる.これは,通常のヨウ化銀の粒 子では,超イオン伝導体(液体なみの高いイオン伝導性)を示す温度は149 ℃である が,ナノ粒子技術で粒子を10 ナノ メートルにすると,40 ℃で超イオン伝導体に変化するということである.
今後の実用化研究の進展に期待したい.
注1 電解質:陽イオンと陰イオンに電離する物質.液体の場合を特に電解液とい う.
注2 イオン伝導性:固体または液体中で,イオン化物(イオン状態の原子または分 子)が移動する性質. 値が大きいほど高速でイオン化物が移動でき,電池などに適している.
参考資料
「蓄電池,新時代へ」,日本経済新聞,12 月9 日.
「全固体電池の最前線」,化学,2012 年7 月号.
「ナノテクが可能にする 安全・安心な全固体電池」,理化学研究所,Web.

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