65.  ふく射伝熱  


   物体は、その温度が絶対零度でない限り、内部エネルギー(熱エネルギー)の一部を電磁波として放射している。 この電磁波は熱ふく射として他の電磁波と区別され、これによる熱エネルギー伝播を応用したのが、ふく射伝熱である (熱ふく射の波長範囲は、おおよそ0.2~1000μmと定義される).
 ふく射による熱エネルギーの伝播は、内部エネルギー→電磁波→内部エネルギーの過程をたどるため、内部エネルギー 自体の熱エネルギー輸送形態をとる伝導や対流等、他の熱輸送形態とは異なって、エネルギー伝播に媒体を必要としない特徴がある。
 また、電磁波のエネルギーが内部エネルギーに変化するために要する時間は、固体の場合非常に短く、通常の伝熱系では 問題にならない。
  したがって、ふく射によるエネルギー移動量の最大値は、表面積[m2]で温度1 の黒体の小物体と、それを囲む温度2の黒体面間のエネルギー移動量の最大値max [W]として次式にて表される。
   max=Aσ(1424)     σ:ステファンボルツマン常数
 とくに、常温付近で温度差が少ない場合、ふく射による等価熱伝達率は自然対流による熱伝達率の2倍以上にもなり、 ふく射伝熱の占める割合は非常に大きくなる。
 このことより空調分野等にて、気流を感じない快適な空間空調の実用化のために、ふく射伝熱の応用研究が進められている。