80   バイオマスエネルギー  


   明確な定義はないが,「光合成によって太陽エネルギーを蓄えた生物体(植物などの有機物質)を利用するエネルギー」と言える.太陽光・太陽熱,風力,地熱などに並ぶ「自然エネルギー」であるが,その利用形態から各種廃棄物の焼却熱と同様な「リサイクルエネルギー」でもある.薪や木炭,木工廃材などの固体燃料,アルコール発酵によるメタノールなどの液体燃料,家畜の排泄物の発酵で生成されるメタンなどの気体燃料が含まれ,主に発電や熱エネルギーとして利用する.  
   元々,植物は光合成で大気中のCO2を吸収して固定化するため,これを燃焼させて大気中にCO2を放出しても,再び植物が光合成でCO2を吸収する.したがって,燃料(バイオマスエネルギー)の消費が循環のレベルを超えなければ,大気中の熱量もCO2も増加しないので,エネルギー資源として循環再利用が可能である.  
   今日,化石燃料(石油・石炭など)の消費が大幅に増加した結果,全世界の年間消費エネルギーのなかで,バイオマスエネルギーの割合は15%程度にまで低下したとされている.一方で,植物が光合成により取込む年間エネルギーは消費エネルギーの7倍以上になるとの試算もある.この膨大な量のクリーンなエネルギーを地球環境の保全(大気中のCO2の固定・温暖化防止)とエネルギー危機の解決のために,積極的に活用しようという動きがあり,COP3(京都会議)やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)のレポートなどでも注目された.  
   バイオマスは単位質量当たりの熱量が低く,全面的に化石燃料に代わる可能性は少ないが,発電を例にとれば同じ自然エネルギーである太陽光,風力,水力発電などよりも電気の供給に対する信頼性,融通性は高い.今後のエネルギー多様化のなかで,直接的な熱利用だけではなく,液体燃料化による効率的な発電,次世代エネルギーとされるメタノールや水素などの供給にも展開が期待される.  

   

(冷凍機分科会)