82    ヒートアイランド(Heat Island)  


     
   都市化が進み,その結果作り出された都市域での独特な現象である.主な特徴は,高温と乾燥,風速の減少,強いビル風の発生(常に一方向),日射量の減少,霧や微雨の日数の増加,大気汚染の増加などが挙げられる.  
   その結果,都市部の気温が周囲の郊外に比較して高くなる現象をヒートアイランド現象という.都市温暖化を意味する用語で,都市部における等温線を描くと都市部が海に浮かぶ島の形に似ていることから,熱の島と名付けられた.  
   19世紀の初頭,ロンドンにおけるハワードの観測により初めてその存在が認められた.その後,ニューヨーク,セントルイス,シンシナティ,カルガリー,東京,仙台などの都市を対象に研究が行われている.
   ヒートアイランドの成因は,都市活動によるエネルギーの使用(冷暖房,自動車などの人工熱の放出,ビルや舗装道路による太陽熱の蓄積,緑地面積の減少,樹木不足による水分蒸発による冷却効果が減少したこと,ビルの乱立による換気不足,上空の大気汚染物質の温室効果などが高温化の原因であるといわれている.  
   冬の寒い朝の気温では,都心部と郊外との差は,東京で6 ℃以上,中規模都市で3~5 ℃にもなる.近年は都市部での夏の熱帯夜の日数が増え,東京では,1960年は10日,94年は47日,99年は63日に達している.  
   また温度上昇速度も,地球温暖化では,100年で2~3 ℃であるのに対して,東京のヒートアイランドは100年で7 ℃程度に達し大きな値を示している.  
   この現象が最も顕著に現れる冬期早朝の東京の温度分布を示す.