(1)比エンタルピーと、エンタルピーの違い

1kgの冷媒(物質)が持っているエンタルピーを比エンタルピーと言います。
比エンタルピーの単位は(kJ/kg)で、エンタルピーの単位は(kJ)です。
比体積(m3/kg)と体積(m3)との関係を思いだせばすぐ解りますね。
比エントロピーも同様です。
分りきったこととして、「比」を取ってしまうことも多いので注意してください。

(2)熱量とエンタルピーの違い

熱量とはある物質から外部へ放出した(または外部から取込んだ)熱エネルギーのことです。
エンタルピーはある物質が持っているエネルギー(熱+圧力Energy)です。
ある物質のエンタルピーが変化すると、その分だけ外部と熱や動力を出し入れします。
(これが熱力学の第1法則です。エネルギー保存の法則とも言います)
例えば、水1kgの温度が1℃下がるのは、4.186kJの熱量で冷却されたからです。
(4.186は水の比熱と言い、単位はkJ/(kg・K)です。昔の単位で1 kcal/kg℃)

(3)状態量とエネルギーの関係

圧力、温度、体積のようにある物質の状態を表すものを状態量と言います。
この他にエンタルピー、エントロピー、内部エネルギーなど色々な状態量があります。
状態変化によって発生するもの、例えば熱量、動力、仕事 等は状態量ではありません。
これらは物質が外部と出し入れするエネルギーです(外部エネルギーとも言います)。
(2)の例で、4.186kJの熱量は外部エネルギーです。
一方、1℃当り4.186kJ/kgだけ比エンタルピー(or内部エネルギー)が高いと言えば、
状態量としての記述です。

(4)エントロピー

熱は高温から低温の物質に流れ、逆には流れません。 (熱力学の第2法則)
(エントロピーは熱力学第2法則から導かれ、ds=dq/Tで示される状態量です。)
エントロピーとは、ある変化が可逆変化とどの程度違うかを示すものです。
可逆変化とは、外部とのエネルギーの出入りが逆転すると元に戻る変化です。
例えば、断熱圧縮のコンプレッサーを冷媒で駆動すると原理的には断熱膨張エンジンになります。
この様なものが可逆変化です。可逆変化ならばエントロピーは変化しません。
なお、断熱変化は必ずしも可逆変化ではありません。

冷凍サイクルでエントロピーを意識するのは圧縮工程です。
理想の圧縮工程では、冷媒とシリンダとの間に熱の出入りの無い断熱圧縮をし、
エントロピー変化もゼロです。だからP-h線図ではエントロピー線に沿ってコンプレッサーを書きます。
(注意) 膨張弁は断熱変化ですが可逆変化ではありません。
物質は高圧から低圧に流れ、逆には流れない からです。・・・これも第2法則の別表現
膨張、蒸発の行程は全て不可逆変化で、エントロピーは増加します。


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