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(1)MSDS制度(Material Safety Data Sheet)
MSDS制度とは、事業者による化学物質の適切な管理の改善を促進するため、 対象化学物質またはそれを含有する製品を他の事業者に譲渡または提供する際には 、その化学物質の性常及び取扱いに関する情報(MSDS:化学物質等安全データシート)を 事前に提供することを義務付ける制度である。
取引先の事業者からMSDSの提供を受けることにより、事業者は自らが使用する化学物質について 必要な情報を入手し、化学物質の適切な管理に役立てることをねらいとし、平成13年1月から 「化学物質排出把握管理促進法」のもと運用が始まった。
近年は、ILO(国際労働機関)条約における取り決めやISO(国際標準化機構)での標準化を はじめとする国際的な枠組みが整備されており、海外や欧米などの多くの国でMSDSの 提供が義務化されている状況になっている。
(2)MSDS制度の仕組み
対象化学物質(またはそれを含有する製品)を事業者間で取引する際、化学物資などの譲渡・ 提供事業者に対して、その性状及び取扱いに関する情報(NSDS)の提供を義務付けている。
また、「化学物質排出排出把握管理促進法」とは別の観点から、労働安全衛生法及び毒物及び 劇物取締法においてもMSDSの提供に係る規定があり、同様の制度が実施されている。

(3)対象化学物質
MSDSの対象となる化学物質は、「第1種指定化学物質」及び「第2種指定化学物質」として定義されている。 具体的には、人や生態系への有害性(オゾン層破壊性を含む)があり、環境中に広く存在する、または 将来的に広く存在する可能性があると認められる物質として、計435物質が指定されている。
第1種指定化学物質 354物質,
第2種指定化学物質 81物質
第1種指定化学物質の例
揮発性炭化水素 ベンゼン,トルエン,キシレン等
有機塩素系化合物 ダイオキシン類,トリクロロエチレン等
農薬 臭化メチル,フェニトロチン,クロルピリホス等
金属化合物 鉛及びその化合物,有機スズ化合物等
オゾン破壊物質 CFC,HCFC等
その他 石綿等,エチレングリコール
(4)対象製品
MSDS制度の対象となる製品は、対象化学物質(第1種および第2種)を一定割合以上(1質量%以上. 特定第1種のみ0.1質量%以上)含有する製品であり、代表的な種類としては、化学薬品、染料、塗料、溶剤 などが挙げられる。
なお、事業者による取扱いの過程で対象化学物質が環境中に排出される可能性が少ないと考える製品に ついては、事業の負担などを考慮し、例外的にMSDSの提供を要しないこととされている。
(5)対象事業者
MSDS制度の対象事業者は、MSDSの対象化学物質または対象製品についての事業者と取引を行なうすべての 事業者が対象となる。製品の場合は、一定要件に該当するものは対象外となる。なお、NSDSは事業者間での取引に おいて提供されるもので、提出先はあくまでも事業者であり、一般消費者は提供の対象者ではない。
[対象事業者の要件]
対象業種 すべての業種
事業者規模 常用雇用者数にかかわらず対象(小規模事業者も対象)となる。
年間取扱量 年間取扱量にかかわらず対象となる
(6)MSDSで提供する情報
①記載しなければならない事項
1.製品名、含有する対象化学物質の名称.政令上の品番号・種類・含有率(有効2桁)
2.NSDSを提供する事業者の名称、住所、担当者の連絡先
3.化学物質が漏出した際の必要な措置
4.取扱上および保管上の注意
5.物理的・化学的性状
6.安定性・反応性
7.有害性・暴露性
8.廃棄上および輸送上の注意
②その他記載できる事項
9.有害性・暴露性の概要
10.応急措置、火災時に必要な措置、労働者に対する暴露防止措置等
11.適用される法令
12.その他、MSDSを提供する事業者が必要と認める事項
冷凍空調の分野でよく使用されてきた物質(CFC,HCFC,エチレングリコールなど) が対象化学物質になっているので、業務上での取扱や対応に十分注意する必要がある。
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