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鳥インフルエンザ
                             


  近年,冬期になると鳥インフルエンザが話題になる.そこで,鳥インフルエンザとインフルエンザとの関係,ならび に感染事例や予防策について紹介する.
 インフルエンザウイルス(単にウイルスと記す場合もある)はA 型,B 型,C 型が存在し,通常,人に流行を起こす のはA 型とB 型である.時に新型ウイルスが出現して,世界的大流行(パンデミック)を起こすのはA 型である.A 型 ウイルスは,人を含む哺乳類や鳥類に広く分布し,中でも水鳥などの水禽(すいきん),特に「鴨」が起源と考えられ, 自然宿主として,現在知られているすべてのA型ウイルスを保有している1).
 水禽では,通常,ウイルスは体内の腸管に存在して共存をはかり,宿主自体に病原性(感染症を起こす性質・能力: (http://ja.wikipedia.org/),最終更新2007 年6 月29 日(金)18:20)を示すことは殆んどなく,ニワトリなどの家禽(かきん) に感染して初めて病原性を発揮することがある.大部分は病原性が低く「低病原性」鳥インフルエンザといわれ,家禽 が死に至ることはない.しかし,当初より病原性の高いウイルスであったか,あるいは感染伝播の過程で変異が起こって 病原性の高いウイルスとなったものが,「高病原性」鳥インフルエンザといわれ,鳥類が感染した場合の致死率は高い1). 現在,一般に鳥インフルエンザといわれるのは,A 型に属し病原性の高いH5N1 型などの「高病原性」鳥インフルエ ンザウイルスに感染して「鳥」が発症する疾患のことである1)
 インフルエンザの中で新型インフルエンザとは,人が感染に未体験で免疫を持たないインフルエンザのことで,過去 には「低病原性」鳥インフルエンザから変異したスペインかぜなどの例がある.近年,新型インフルエンザウイルスへ 変異する可能性があるとして,もっとも警戒されているのが「高病原性」鳥インフルエンザウイルスである.「鳥→鳥」 感染,「鳥→人」感染を経て,「人→人」感染に至るインフルエンザのことを指し,この新型インフルエンザが,日本で 流行した場合の死亡者数は64 万人を上回ると予想されている.
 毎年流行するインフルエンザと,鳥インフルエンザと,新型インフルエンザとの詳細な関係,および,スペインかぜ, アジアかぜ,香港かぜ,ソ連かぜなどの過去の新型インフルエンザの出現例については,岡田晴恵先生(国立感染症研 究所)の著書「鳥インフルエンザの脅威:河出書房新社」によられたい.
 鳥インフルエンザの感染事例では,日本の「鳥→鳥」感染は,養鶏場に防鳥ネットを張っていたにもかかわらず発生した. この感染は,行政機関が速やかに拡大防止策を実施し「鳥→人」感染には至らなかったが,感染経路については調査中である.
 世界では1997 年に,鳥インフルエンザの「鳥→人」感染が確認されて以来,「鳥→人」感染で160 名程の人が死亡し ている.しかし,「人→人」感染はきわめて少なく大事には至っていない1)
 鳥インフルエンザを源とする「人→人」感染,すなわち新型インフルエンザの感染予防策は,現在,全国的に講じら れていて,国立感染症研究所や行政の各保健機関により開示されている.
 日本では,近年の鳥インフルエンザも,毎年流行する人のインフルエンザも,冬期に流行している事例が多い.人の インフルエンザ感染は「温度よりは湿度の要因が大きい」といわれている2).これは「冬期の乾燥時,体が冷えて,鼻 や咽喉が湿っていない」状態では,風邪をひきやすいという体験から理解できる.
 日本の気象は,冬期は乾燥気味であり「加湿」を必要とし,一方,夏期(特に梅雨期)は多湿であり「除湿」を必要 とする.文献によると,相対湿度がほぼ40 ~ 60 % RH の範囲であれば,ウイルスや各種の細菌類は不活性となり,逆 に低湿度側や高湿度側では活性化することが示されている3)
 このことから,インフルエンザ感染には,地球温暖化を考慮しつつ,日常生活の中で,「温度制御や湿度制御の空調 技術を有効に活用する」ことが予防に役立つと思われる.

 文  献

文  献
1)国立感染症研究所感染症情報センター(http://idsc.nih.go.jp/disease/avian_influenza/index.html),鳥インフルエンザに関する Q & A[2006 年12 月更新].
2)庄司真抗酸菌病研究所誌,40(2),95―106(1988),(http://www.google.co.jp[庄司真インフルエンザ湿度]で検索)抗 酸菌病研究所(東北大学)は平成5 年度に加齢医学研究所に改組された.文献2 は「平成15 年度ヒートアイランド現象に よる環境影響に関する調査検討業務報告書:平成16 年3 月環境省」の「3. 関連文献の整理」の中に【文献D】として紹介 されている.(http://www.env.go.jp/air/report/h16-04/mat02d-f.pdf)
3)高野憲康冷凍,80(929),187―188(2005).

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