京都議定書による温室効果ガスの排出規制において,冷凍空調機器については「代替フロン等第3ガスの排出規制」に
より,HFCsが温室効果ガスに指定されている.そこで,地球温暖化係数が低く,環境に優しい冷媒技術の開発が急務と
なっている.
自然冷媒であるCO2 冷媒は,GWP(Global Worming Potential ;地球温暖化係数)が1 と小さく,給湯では高温給湯が
可能であり,また,COP(Coefficient of Performance;成績係数)も高いため,家庭用や業務用の給湯機として実用化さ
れている.しかし,空調機への適用では,CO2冷媒を用いた冷凍サイクルのCOPはHFC冷媒を用いた冷凍サイクルに比
べて低く,高効率化技術の開発が必要となっている.
CO2 冷媒を用いるとガスクーラと蒸発器間が高差圧となるため,膨張弁で行われている減圧過程の絞り損失を有効な
仕事として回収するような膨張機を用いることにより,COP改善が可能である.膨張機は冷媒が高圧から低圧になる膨
張エネルギーを動力として回収し,たとえば冷媒を圧縮する動力の一部として用いるものである.
膨張機の構成の一例としては,スクロール圧縮機と同形状の固定スクロールと揺動スクロールで,膨張機構,圧縮機
構それぞれを構成したものがある.これは,膨張機構の固定スクロール中央より高圧冷媒を導入し,吸入側に流出させ
ることにより揺動スクロールを駆動する.次に,この揺動スクロールに連係した軸を回転し,軸のもう一方に連係した
圧縮機構の揺動スクロールで冷媒を吸入し圧縮して吐出するように動作する.
膨張機の設置位置は,膨張機構によって駆動される圧縮機構を,主圧縮機の「吸入側に設けるもの」と「吐出側に設
けるもの」の2 種類がある.
図1は,前者(圧縮機構吸入側設置)の冷凍サイクル構成とその動作(P-h 線図)を示す.各動力は,次となる.
主圧縮機圧縮動力=hc- hb,
膨張機回収(=圧縮)動力= hb- ha,膨張動力= hd- he
図2は,後者(圧縮機構吐出側設置)の冷凍サイクル構成とその動作(P-h 線図)である.同様に,各動力は,次と
なる.
主圧縮機圧縮動力= hb - ha,
膨張機回収(=圧縮)動力= hc- hb,膨張動力= hd- he
膨張機を設けたCO2 冷媒の冷凍サイクルCOPが,設けない場合に比べて,冷房で約30 %改善できたとの報告がある.
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