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TPP(Trans-Pacific Partnership)
                             


 いま,TPP(環太平洋パートナーシップ協定,環太平洋経済連携協定)という言葉が,新聞,ニュースなどで盛んに 取り上げられ,この参加可否をめぐり様々な議論が繰り広げられている.国内での反応は,概ね産業分野ごとに分けら れるようであるが,一方で同じ分野に対しても異なる考えを主張する学者の方々も多数おられる.この中,野田首相が 「交渉参加に向けて関係国と協議に入る」と発言した後,すぐにカナダ,メキシコが交渉参加への関心を表明したこと は,この地域において日本の影響力がいかに大きいかを示し,諸外国にとってもその動向が非常に高い関心事であると いえよう.
 さて本誌(「技術学会誌」である)読者の日本冷凍空調学会に属する法人,個人の方々は,工学者,技術者が大多数か と考えるが,ここでも賛成,反対,また条件次第であり簡単に決められることではないなど,様々なご意見があろうか と思う.以下に,TPP の趣旨とその概要について紹介したい(2011 年11 月末現在).
 ・趣旨 環太平洋に,従来より大規模で例外のない自由経済圏を築くことを目標とする.具体的には,加盟国間での工業品, 農業品を含む全品目の関税を撤廃し,政府調達,知的財産権,労働規制,金融,医療サービスなどにおけるすべての非 関税障壁を撤廃し自由化することを目指している.
 ・概要 発足時の目的は,「小国同士(下記4 加盟国)の戦略的提携によってマーケットにおけるプレゼンスを上げること」で あった.
 2010 年10 月よりアメリカ主導の下に急速に推し進められることとなる.
 加盟国,交渉国に日本を加えた10 か国のGDP(国内総生産)を比較すると,その91 %を日本とアメリカの2 か国が 占めるため,実質は日米のFTA(自由貿易協定)だとの見方もある.
 2011 年11 月,交渉参加9 か国の首脳は,APEC(アジア太平洋経済協力)会合(ハワイ)の機会を捉えて,TPP の 「大まかな輪郭(broad outlines)」に合意したことを発表.さらに日本,カナダ,メキシコの3 か国が交渉参加に向けた 協議に入ることを表明したことで,TPP に対するスタンスなどをめぐり活発な議論が行われている.
 ・日本におけるTPP 試算(加入による経済(GDP)効果,10 年間)*1 内閣府:2.4 ~ 3.2 兆円増加(100 %自由化の場合) 農水省:7.9 兆円損失(全世界対象に直ちに関税撤廃,対策未実施の場合) 経産省:10.5 兆円損失(日本TPP 不参加,韓国が米韓FTA,中韓FTA,EU 韓FTA 締結の場合) 上記は経済効果の試算前提が異なるが,それぞれの数値乖離が大きく信頼性を疑問視する声もある.
 ・TPP 参加に対する意見 グローバル化が進む世界経済において,日本の出遅れ感は否めず,TPP 参加はこれを取り戻す絶好の機会である. 日本との貿易量の大きい中国,韓国が,TPP 不参加を表明しているため,利益にならない.など.
 ・加盟国:シンガポール,ブルネイ,チリ,ニュージーランド
 ・加盟表明国:オーストラリア,ペルー,アメリカ,ベトナム,マレーシア 少子高齢化が進み国土の小さい日本において,医療,農業,製造業の分野をどのような方針で推し進めていくのか, このこととTPP 参加可否,また合意事項はきわめて密接な関係となる.将来像を議論できる好機と期待したい.
 *1:EPA に関する各種試算,国家戦略室:内閣官房(平成22.10.27)
 参考資料:ウィキペディア(Wikipedia)http://ja.wikipedia.org/wiki
 

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