最近気になる用語 214
FSSC22000
                             


  食の安全・安心に対する要求の高まりを受け,HACCP,ISO22000 への対応が叫ばれるようになって久しいが,2011 年11 月12 日の日本経済新聞朝刊に〈食の安全「国際標準」対応〉と題して,国内大手食品・飲料メーカーのFSSC22000 取得の動きが取り上げられた.
 コカ・コーラグループは2011 年春には国内全29 工場での取得を済ませており取引先にも取得を要請,またイオンで も国内外のプライベートブランド加工食品の委託先約450 工場に対し,2015 年度までに取得を要請する模様である.
 FSSC22000とは,FSSC(Foundation for Food Safety Certification)が開発した規格である.規格の制定にはGFS(I Global Food Safety Initiative)が大きく関与している.GFSI は食品小売業界の国際ネットワークであるCIES(International Committee of Food Retail Chains)の下部団体として2000 年5 月に設立された非営利団体であり,その承認規格はWAL MART, The Coca Cola Company, McDonald’s など世界の名だたる食品メーカーに承認されている.GFSI は規格制定 により評価プロセスを維持することでの食品安全リスク軽減,規格を世界で共有し認めることによるフードサプライ チェーンの費用効率の向上を目的としている.
 GFSI はISO22000 が制定された際,そのガイダンス文書に詳細な適正製造規範(GMP)もしくは「前提条件プログラム」 が明示されていないとの理由で受け入れがたいと判断した.それを受け,英国のBSI(British Standards Institution:英 国規格協会)がISO22000 と合体して使用する「前提条件プログラム」としてPAS(Publicly Available Specification)220 を導入し,GFSI はISO22000 とPAS 220 の両方を満たす規格としてFSSC22000 を受け入れることとなった.
 PAS 220 はISO22000 の7.2.3 項にある「前提条件プログラム」10 項目に新たに5 項目を追加した上で要求事項を詳細 化したものである.PAS 220 の邦訳版は発行されていない.我々はISO(国際標準化機構)がPAS 220 を参考にして制定 したISO/TS 22002-1 よりその内容を理解することができる.
 具体的には,ほとんどがHACCP で示されたPP(Prerequisite program)や「弁当及びそうざいの衛生規範」をはじめ とする各業種に対応した衛生規範の中のガイドラインに沿った内容で,食品メーカー,エンジニアリング会社にとって はなじみのある事柄となっているが,「食品防御,バイオビジランス及びバイオテロリズム」が新しい追記内容であると 理解している.
 この項では,「一般要求事項」の節で生産妨害,破壊行為,組織的暴力など,人による悪意を持った汚染に対する対応 が要求されている. また,「アクセス管理」の節では,
 ① 施設内での潜在的な注意の必要な区域は明確にされ,地図に書いて,入場管理をしなければならない.
 ② 実行可能な場合は,入場は鍵や電子カードや他の代替システムによって物理的に制限することが望ましい. と記載されており,2007 年12 月に発生した中国製の毒入り冷凍ギョーザ事件など,フードディフェンスへの対応を意 識した内容となっている.
 いずれにしても,項目としての要求事項は増えているが,製造室を1 時間に何回換気すれば良いかなどの設計指針と なる数値の記載はほとんどなく,本規格に適合する場合には設計の根拠作りにさらに頭を悩ませそうである.
 
 文献 矢田富雄:「現場視点で読み解くISO/TS22002-1:2009 実践的解釈」,幸書房,(2011 年8 月発行).
 

「最近気になる用語」
学会誌「冷凍」への掲載巻号一覧表