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 トリジェネレーション(tri-generation)  
 
学会誌「冷凍」に掲載された記事を集めました。
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 本題の前に,コージェネレーション(co-generation)について説明したいと思う.日本語では熱電併給と呼ばれてい る.ガスエンジンやディーゼルエンジン,ガスタービンを駆動源にして発電を行うとともに,エンジンなどからによる 排熱を空調や給湯に用いることで,エネルギーの総合効率を高めようというシステムである.一般的な火力発電の場合, 消費地(需要家)から遠く離れた場所に発電所が建設されるため,電力は送れても排熱は遠方まで送れないので捨てざ るを得ない(もしくは,発電効率を高めるための補助熱源として利用せざるを得ない).そのため,総合効率は55 %程度 までしか高められない.一方,コージェネレーションは,たとえばビル内に自己消費できる小規模の発電設備を設置し, 同じビル内で電気と排熱を消費することにより,70 ~ 80 %の高い総合効率が得られるものである.最近では震災以降, 分散型発電システムとして防災面からの電源確保の目的も高まっており,大いに普及してきている.このようなコージェ ネレーションとして身近な例では,“エネファーム”と呼ばれている燃料電池を用いた家庭用のものがある.
 さて,トリジェネレーション(tri-generation)であるが,上記の電気,排熱に加えて,エンジンなどから発生するCO2 も利用しようというものである.CO2 を何に利用できるかというと,その用途は主に温室内で栽培される植物の育成増 進である.たしかにCO2 は植物にとって光合成を行う上で欠かせないものである.また,CO2 濃度を通常より高めるこ とにより収穫を高める効果があることも報告されている.電力は照明やその他動力に供給し,排熱は温室なので室内を 温暖に保つために有効利用できる.一石三鳥である.海外では大規模農場に多くの実績があるようだ.日本ではまだ数 は少ないが実運用をされている例もある.さらには,工業用にCO2 を利用しようとする試みもある.工場から排出され るアルカリ性の排水をCO2を用いて中和するのである.
 このように,発電システムの総合効率向上の手段としてトリジェネレーションは発生した.コージェネレーションが “エネファーム”として身近なものになってきたように,今後,トリジェネレーションがどのような形で私たちの生活に 普及していくのか楽しみである.

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