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 イチジク葉茶  
 
学会誌「冷凍」に掲載された記事を集めました。
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 茶は狭義の意味で,ツバキ科のチャノキの葉を加工したものを指す.われわれ日本人にもっとも馴染みのある緑茶は, カテキンを多く含み,抗菌・抗酸化・抗ウイルス作用,虫歯予防などの機能が広く知られている.ペットボトル緑茶で は, 健康志向に特化した高機能緑茶商品がヒットしている.緑茶の高機能性とは,花粉症やアレルギー症状(べにふう き緑茶), インフルエンザ,骨粗鬆症,コレステロール抑制(碁石茶),安眠快眠(さえみどり)への効果である 1). さ らに,緑茶はビタミンCが豊富であるため,風邪予防,肌荒れ改善などにも効果があるとされている. ウーロン茶は緑 茶と同じくチャノキの葉から作られるが,茶葉を半発酵させて製造される点で緑茶とは異なる. 半発酵により生成され るウーロン茶ポリフェノールは膵臓のリパーゼの働きを阻害し,脂肪の吸収を抑えるとされている. これらの茶はとり わけ機能性が高く評価され消費量も多い.
 茶の代用品として他の植物を水や熱湯で抽出したものも, 広義の茶として飲用されている.広義の茶の中でも,漢方 薬の材料となる植物を用いるなど,薬効があるものは健康茶とされる(表1). 植物の葉を用いた健康茶としては,ドク ダミ茶,ルイボスティ,桑の葉茶および柿の葉茶が身近である 1). 実を焙煎して飲用する健康茶としては,そば茶や麦 茶が日本人には馴染み深い.厚生労働省に 医薬品として認可されているドクダミは, その薬効の多さから十薬と称される.桑の 葉茶はカルシウムと鉄分を多く含み,免疫 機能の補助や疲労回復に効果があるのみならず, デオキシノジリマイシンも含まれて いるため,小腸での糖吸収遅延による食後 血糖値上昇抑制,インスリン過分泌抑制機 能が注目されている 2). 柿の葉茶にはビタ ミンCが多く含まれているため風邪の予防 効果があり,また含有するタンニンやルチ ンはビタミンCの吸収効率上昇に役立つ とされている. 桑や柿は自宅の庭や近所に 生えていることも多く,それらの葉を用い た桑の葉茶や柿の葉茶は,市民が簡単に作 れる身近な健康茶として興味深い.
 筆者は,宮城県女川町の一般社団法人コミュニケーションス ペースうみねこ 3)から依頼を受け,イチジク葉を乾燥して調製 したイチジク葉茶の機能性を評価した. 本団体は東日本大震災 直後の避難所における母親の支援を行う「ママサポーターズ」 を母体とし,子育て支援や学習支援を行ってきた. その後,母親支援から漁業従事者支援に移行した.設立当初は漁業従事者 による手芸品(おもに布草履,手ぬぐい動物,正月飾りなど) を販売することにより, 漁業従事者の生活を支援してきた.そ の後,果樹園カフェゆめハウスの運営(図1),イチジク,にんにく, 唐辛子などの塩害に強い農産物の生産・加工・販売も行 うことで,被災者の就労の場やコミュニケーションの場を設け るとともに,経済的自立を支援している.

 イチジクは主に果実を食用に,葉を健康茶に用い,どちらも生薬としての 効果を有する. イチジク葉茶は,表面を洗った葉を天日干しまたは焦げない 程度の温度で乾燥後,緑茶同様に抽出液を得る.宮城県女川町産イチジク葉茶(図2)の抽出液は, ルチンやミネラルを豊富に含んでいた.また,いく つかの生活習慣病に対する予防効果は,ドクダミ茶,桑の葉茶,柿の葉茶お よびルイボスティと同程度であった. 実際に飲んだ際の味について,イチジク葉茶はカテキンやカフェインを含まないため苦味や渋味をまったく感じる ことなく,また柔らかな甘い香りがあるため飲みやすい飲料であった. コミュニケーションスペースうみねこの高齢者のなかには,本品の飲用により, 生活習慣病の症状が緩和した方もいたようである.
 庭にイチジクが生えている方は自家製のイチジク葉茶を作り, イチジクが身 近にない方は被災地支援の一環としてイチジク葉茶を購入し,イチジク葉茶の 香りを楽しむとともに生活習慣病について考えてみるのも良いかもしれない.
文献
1)藤田紘一郎:「「医者いらず」の健康茶事典」,PHP文庫,(2010).
2)K.Konno:Proceedings of the National Academy of Sciences, 103(5),1337-1341(2006).
3)一般社団法人コニュニティスペースうみねこWEBサイト,https://www.onagawa-umineko.com/(2017年10月)

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