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リステリア 
 
学会誌「冷凍」に掲載された記事を集めました。
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リステリア(リステリア・モノサイトゲネス)は,食中毒の公式報告例が無く,従来あまり注目されていない食中毒 菌であった.しかし,2013 年に食品安全委員会が行った食品健康影響評価(リスク評価)に基づき,ナチュラルチーズ (ソフトおよびセミハード),非加熱食肉食品(生ハムなど)に「1 g 当たり100 cfu(100 cfu/g,cfu= colony forming unit) 以下でなければならない」との規制が設定されて以来,注目をあびている.
リステリアは自然界に広く分布しており,土壌,植物,表流水,と畜場などの様々な環境から分離されるとともに, ヒト一般集団の2 ~ 10 %がリステリアの保菌者であるといわれている.リステリアの増殖温度域は-0.4 ~ 45 ℃(至適 温度37 ℃)のため,冷蔵庫内でも増殖可能である.また増速可能pH は4.4 ~ 9.4(至適pH 7.0),増殖可能な最小の水分 活性は0.92(食塩濃度11.5 %相当)である.そのため食品によっては,出荷された時点で低い汚染菌数であっても,家庭 での取り扱い状況によっては,リステリアが増殖する可能性がある.
またリステリアは,健常者であれば感染しても症状が出ないことが多いが,高齢者などの高リスク集団では発症のリ スクが高まり,20 ~ 30 日の潜伏期間の後,髄膜炎や敗血症を引き起こすこともある.また妊婦は感染しやすく,早産 や流産の原因になったり,胎児に影響が出たりする例も見られる.リステリア症の死者は2001 年から2010 年の10 年間 で18 人(人口動態統計の死因より)であること,リステリア症の大半は食品由来であることから,注意すべき食中毒菌 のひとつといえる.
HACCP 法制化に伴い,危害要因分析を行うケースも増えるが,チルド食品における原料由来・工程中の二次汚染に よるリステリア汚染の危険性に関しても考慮を払うべきと考える.
参考文献
「食品中のリステリア・モノサイトゲネス」,食品安全委員会,(2013).

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