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ドリュール 
 
学会誌「冷凍」に掲載された記事を集めました。
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 パンやクッキーなどの小麦粉を用いた焼成食品は,味,内相および外相の食感のみならず表面色もまた重要な品質要 素である.とりわけ,焼成後の色付けを好ましくするための工夫として,生地に溶き卵(ドリュール)を塗布すること が多い.ドリュールはフランス語でメッキを意味するdorure を語源とし,パンや焼き菓子の表面に,光沢を付けるため に塗る溶き卵を指す.焼き菓子などにドリュールを塗布することをドレdore という.ドリュールをパンやクッキー生地 ならびにケーキ表面に塗布する目的は,表面を茶褐色で美味しそうな色にすることにより魅力・商品価値を上げること である.また,ドリュールは焼成中および保存中に生地から水分が蒸発するのを防ぐ物質移動障壁となることから,焼 成後のパンやクッキーの水分量にも影響を与える.さらに,生地同士または生地と飾り食材の接触部分に塗ることによ り,それらを固定する糊の働きも兼ね備えている.
 ドリュールは全卵や卵黄を主原料に,水や牛乳を添加混合することが一般的 である.配合割合としては,全卵1 個に対して重量割合10 %の牛乳や水を添加 するもの,全卵2 個と卵黄1 個を混合するもの,卵黄と水を等量混合するもの, これらに砂糖や塩を添加するものなど,様々である.そのほかに,豆乳,みりん, バター,牛乳などを単独または卵と混合して用いるレシピもある.ドリュール を塗布直後にオーブンに入れて焼成すると,焼きムラや流れ落ちることがある ため(図1),少し乾燥させてから焼成すると,表面色にムラがなく,仕上がり がきれいになる.

 焼成後のタルトやケーキの表面色の艶出しを行うために,フルーツなどの上 がけとしてゼリー状のナパージュを用いることも多い.ナパージュは,砂糖, 水飴,ゼラチン,ペクチン,アルギン酸ナトリウムおよび水などを原料とし, ドリュール同様に乾燥防止,保湿効果および食材の固定効 果を有する.
 卵黄のみで調製したドリュールを塗布すると,焼成後の 表面色が濃くなるが,全卵や卵黄に牛乳や水を添加するこ とにより,幅広い色を作り出すことができる(図2).
 卵黄の色は,色素成分カロチノイド(キサントフィルや カロチン)に依存し,鶏の飼料に含まれる黄色トウモロコ シやグルテンミール,パプリカ抽出物など,養鶏業者に よって消費者に好まれる卵黄色作りのノウハウは異なる.ドリュールによる焼成体の表面色の色付けは,基本的には卵 に含まれるキサントフィルの沈着と,生地そのものの小麦粉や副材料に含まれる糖質(還元糖)とアミノ酸により,褐 色物質メラノイジンが生じるメイラード反応(褐変反応)の併発によると考えられる.
 ドリュールは,一般的に刷毛でパン,クッキーおよびケーキに一つずつ塗布するため,手間と時間を要する.また, 割卵後の液卵は保存がきかず,塗るたびに割卵する必要があることから,廃棄量が増加する点が課題となっている.
 文献
 1)竹谷光司:「新しい製パン基礎知識」,pp.147-152,パンニュース社,東京(2008).
 2)木村進ら:「食品の変色の化学」,pp.211-219,pp.291-316,光琳,東京(1995).
 3)中村良ら:「卵の科学」,pp.19-29,朝倉書店,東京(1998).
 4)興野燈:「伝統のエッセンスを見直して作る フランス菓子の新しい解釈 パティスリー・アカシエ」,pp.77-98,旭屋出版 MOOK,東京(2012).

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