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MEMS 
 
学会誌「冷凍」に掲載された記事を集めました。
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 MEMS は,Micro Electro Mechanical Systems の頭文字であり,「メムス」と呼ばれている.微細加工技術を用いて 電子回路だけではなく,センサ,アクチュエータを一つの基板や有機材料上に集積化したデバイスを示し,特徴として 小形化,一体化,量産性が挙げられる.
 MEMS デバイスの活用例として,液晶画面は屋外など明るい環境では見えにくい弱点があるが,表示方式が違う MEMS は見やすい.MEMS は,1 秒あたり最高1 万回という高速で開閉する微小なシャッターで光を制御し,画像にす る技術である.バックライトが液晶やカラーフィルタを通る液晶方式と違って光を効率良く通すため,同じ条件なら画 面が液晶より2 ~ 3 倍明るくなる.消費電力も半分以下である(液晶画面の例を図1に示す).また,現在では当たり前の機能であるが,スマートフォンを横倒しにしても画像が同じ向きで表示される のは,搭載された加速度センサが地球の重力の向きを感知しているからである.

 我が国は,内閣府の第5 期科学技術基本計画でSociety5.0「必要なもの・サー ビスを,必要な人に,必要な時に,必要なだけ提供し,社会の様々なニーズに きめ細かく対応でき,あらゆる人が質の高いサービスを受けられ,年齢,性別, 地域,言語といった様々な違いを乗り越え,活き活きと快適に暮らすことので きる社会」と定義される「超スマート社会」を目指している.Society5.0 では, フィジカル空間のセンサからの膨大な情報がサイバー空間に集積され,この ビッグデータを人工知能(AI)が解析し,その解析結果がフィジカル空間の人 間に様々な形でフィードバックされる.つまり,これまでと比較して膨大で良 質なセンサ情報が今後ますます要求される.
 MEMS は既に,自動車,各種製造 機器,情報機器,通信機器,セキュリ ティなどの広範囲な分野において,我 が国の産業競争力強化に貢献している (MEMS の活用例を図2に示す).さ らなるMEMS 技術の進化により,環 境と消費エネルギー量の関係の把握, 広域にわたるセンシングデータの活 用,デバイス・ネットワークの普及と 標準化によるユーザー選択の向上が期 待でき,超スマート社会が実現すると 思われる.MEMS は今後,快適な生活 に欠かせない存在になると予想される. 普及範囲が広がり,地球規模で快適な 社会が実現することを期待したい.
 文献:
 朝日新聞デジタル,(2014 年9 月13 日).
 NEDO:「社会課題対応センサーシステム開発プロジェクト」資料,(2015 年9 月14 日).

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