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昆虫食 
 
学会誌「冷凍」に掲載された記事を集めました。
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「昆虫食」は字のごとく「昆虫を食べる」ということであり,日本では抵抗ある人も多いと考える. 過去へさかのぼってみると,縄文時代の遺物や糞石などの調査から縄文人は昆虫を食していたことが明らかになって いる.また,平安時代に書かれた日本に現存する最古の薬物辞典「本草和名(ほんぞうわみょう)」の中にはイナゴを食 べていたことを示す記述がある.中国から伝わった漢方薬には昆虫が使われることもあったため,薬用としてはさらに 他の昆虫も食されていたと言われている.大正時代の調査結果では,食用として消費されていた昆虫は55 種,薬用とし てはさらに多い123 種との報告例もある.
このように日本では昔から昆虫は身近な存在であったが,戦後の欧米型食事の普及に反比例するようにその食習慣は 衰退し,限られた地域でその文化が残るだけである.しかしながら,この「昆虫食」は今世界で注目されており,食用 昆虫の市場規模は年平均成長率24.4 %で拡大し,2030(令和12)年には約8,600 億円に達する見通しとの報告例もある. 昆虫食が国際的な関心を集めるきっかけになったのは,国連食糧農業機関(FAO)が2013(平成25)年に出した「食品 及び飼料における昆虫類の役割に注目する報告書」であり,この中で2030(令和12)年に人口が90 億近くに達すると見 込まれる地球の食糧問題の解決手段のひとつとして「昆虫食」を推奨したことにあると言われている.
昆虫は種類により異なるが60 ~ 70 %がタンパク質で,動物性タンパク質の代表である牛肉や豚肉と比較した場合の 優位性として,①同じ重量の食肉を生産するのに必要な飼料や水が少ない,②養殖に必要な土地(面積)が小さい,③ 養殖の過程で発生する温室効果ガス放出量が少ない,④高栄養価,といった点が挙げられる.
注意しなければいけない点としては,①殻類アレルギーを持つ人は昆虫に対して同様のアレルギー反応を起こす危険 性がある,②細菌・ウイルス・菌類・原生動物などを保有している可能性がある,といった点が挙げられる.
上記のとおり「昆虫食」にも一長一短があるが,日本国内で「昆虫食」が普及するための大きな課題としては,やは り見た目のグロテクスさが一番大きいと考えられる.そのため,まずは高栄養価に着目し,昆虫を粉末化後加工食品に 混ぜ合わせた補助食品としての活用や,家畜の飼料としての利用が現実的である.また,日本国内において食材として の昆虫はJAS 法規格外であり,規格基準などの制度の作成も必要になってくると考えられる.
近い将来,肉や魚と同じように昆虫が違和感なく家庭の食卓にあがっているかもしれない.
 参考資料
https://mag.japaaan.com/archives/76995:2020(令和2)年.
https://globe.asahi.com/article/12611838:2020(令和2)年.
https://darwin-journal.com/edlible_insects_entomophagy:2020(令和2)年.
https://allabout.co.jp/gm/gc/476362/:2020(令和)年.

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