最近気になる用語 46
 
環境会計(Environmental Accounts)
                                


  環境会計(Environmental Accounts)とは、企業が環境対策にかけた費用と、その効果を金額で表わし、決算時の バランスシートのように比較表として作成するものである。
  1987年の国連の環境と開発に関する世界委員会(WCED)で公表された「持続可能な開発/持続可能な社会」という 概念は、地球環境の維持、人類及び地球生物存続のため全世界を挙げて努力するという目標であった。その後、年を 重ねる毎に先進各国の環境対策の取組みは進んでいる。特にEU諸国は環境先進国としてリーダーシップをとっている。
 1995年EUは、環境管理、監査計画(EMAS)を定め、企業は環境対策実行の証として、これに基づき環境諸表を 公表しなければならないことを規定している。このためEU各国の企業では「グリーン決算報告書」「環境決算」など の名称で環境対策とその効果を金額で表わし公表している。
 日本においても京都のCOP3以降、政府の要請、官公庁、企業、個人に至るまで環境意識の高揚とともに 対策は進んでおり、企業の取組みはこれが企業イメージを制するとの意識から急速に進んでいる。ISO14001(環境 マネジメントシステム)取得工場も増加し、今年は、さらに「環境会計」の公表を行う企業も出始め「環境に優しい 企業」をアピールしている。これは従来の政府主導型市民運動のプレッシャーによる行動ではなく、前向きな自主行動への 転換を示すものとして評価されている。
 この耳なれぬ「環境会計」は、新聞紙上にその概要が発表され、一躍、環境用語として浮び上った。これによると、 富士通グループ、西友の「環境会計」、宝酒造の「緑字決算」があり、松下電器、ソニーも検討中とあり、さらに多くの 企業がこれに参入するとみられている。
 しかし、この会計方式は、効果の評価方法に基準がなく企業ごとに評価金額を算出しているため、比較が難しく、 企業宣伝のそしりを受けかねない難点が指摘されており、今後の研究と統一評価基準の作成が望まれている。 次表は、富士通グループ1999年3月期の環境会計の例(朝日新聞)である。
 
富士通と主な子会社の環境会計(98年度実績、単位、億円)
                
 費 用 
 効 果 
直接的費用環境設備の導入や維持費など 78  生産支援のための環境保全費用環境保全活動の寄与分 58 
間接的費用環境対策推進の人件費など 26  工場省エネ費用電力、石油、ガスの削減額 9 
省エネ費用省エネ対策費用 9  リサイクル活動リサイクル品など売却額 38 
廃棄物減量化によるコストダウン額
リサイクル費用製品の回収、再商品化 4 リスクマネジメント公害に対する住民補償など14
廃棄物処理費用16事業所操業ロス回避見積り額 32 
研究開発費用環境対応技術開発費など 3 環境ビジネス活動環境ビジネス製品販売貢献額  7 
社会的取組み費用環境宣伝費用など 5 環境活動の効率化ペーパーレス効果などのコストダウン額など 16 
その他ダイオキシン対策 6 環境教育活動社内教育効果額 5 
147 182

「最近気になる用語」
学会誌「冷凍」への掲載巻号一覧表