72.  熱電素子(Thermoelectric element)


   熱と電気を関係づける現象を利用した素子の総称で、電気抵抗の温度変化を利用した素子 (サーミスター)、温度差により発生する起電力(ゼーベック効果:Seebeck effect) を利用した熱発電素子、電流により熱の吸収・発生現象(ペルチェ効果:Peltier effect) を利用した電子冷却素子に分類される。
   サーミスターは電気抵抗が温度によって大きく変化する半導体であり、 電気抵抗と温度の関係によりNTC(Negative Temperature Coefficient)サーミスター、 PTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスター,クリジスター(CTR: Critical Temperature Resistor)がある。
NTCサーミスターは電気抵抗が温度上昇によって減少する(負の温度係数)特性を持ち、
PTCサーミスターは電気抵抗が温度上昇によって増加する(正の温度係数)特性を持つ。
クリジスターは、負の温度係数をもち、ある特定の温度で急激に抵抗が変化する特性がある。
   ゼーベック効果は2種類の金属または半導体の両端を接続して、その 両端を異なる温度に保つと回路に電流が流れる現象をいい、1821年にゼーベックが発見した。 これは一本の金属棒の両端を異なる温度に保つとき、温度の高い方から低い方に熱の流れが生じる 。金属の場合、この熱流は内部の電子によって運ばれるため、両端には電位差(起電力)が生じる 事となる。この起電力は金属の種類によって異なるため、2種類の金属の両端で電位差として取り出す ことが出来る。この電位差を利用して温度計測をおこなうのが熱電対である。熱電発電には大きな 電位差を得るためにp型半導体、n型半導体を組み合わせて使用している。
この時、この対は先に述べた 温度計測用の金属熱電対と区別し、熱電変換素子と呼ばれ、多数の素子を板状、または 円筒状に組み合わせたサーモ―モジュールとして使用される。この熱電変換素子材料としては、
①常温から500Kまでのビスマス・テルル系が、②常温から800Kまでは鉛、テルル系が、 ③常温から1000Kまではシリコン・ゲルマニウム系材料が使用されている。熱電発電は地上用発電, 人工衛星用の電源として利用されている。
   ペルチェ効果は2種類の金属または半導体を接合して電流を流すとき、一端の接合部に ジュール熱以外の発熱が他端には吸熱が起こる現象であり、1834年にペルチェにより発見された。 この吸熱および発熱現象は可逆的であり、電流の向きを変えれば発熱と吸熱は逆になる。 ペルチェ効果による冷凍・冷蔵は、圧縮式冷凍と異なり冷媒が不要であり、 きめ細やかな温度制御が可能である。