83    高圧処理  

   我々は大気圧(1気圧≒0.1MPa)で生活をしているが,10 000mの深海の生物は1 000気圧(100MPa)の圧力下で生活している. 図1のように,試料を水を満たした容器に入れ,圧力を加える.50MPa以上の圧力では生物や食品では表1のような現象が観察される. このような作用は食品の保蔵や加工に利用することができる.圧力は熱と異なり,その作用が試料全体に均一に伝わり, また一旦圧力をかけて系を閉じてしまえば,圧力の保持ができ省エネだ. 熱のように成分間の化学反応も起きにくいので,食品の色や香りを良好に保つことができる.
     また,圧力下では体積が小さくなる反応が促進されるので, 氷点下でも凍らない水が存在する.図2のように200MPaでは凍結点は-20 ℃ぐらいになる. この現象を利用すれば生の食品を凍結せず0℃以下で保存することも, また冷凍食品を短時間に解凍することも可能だ.安価な圧力発生装置の開発や, 各種食品の品質や加工と圧力の関係など未解明な問題点は多いが,21世紀の食品技術だ.


(参考資料)林 力丸:日本食品保蔵科学会誌,17, pp.23・30,(1991).
     林 力丸:「加圧食品―研究と開発―」,さんえい出版,(1990).