79  照射食品(2)   


   ③ アメリカにおける照射製品の検査と工程管理  
照射食品はGMP,HACCPなどの規制を受ける.とくにFDA(Food and Drug Administration:米国食品医薬品局)はGMPの一部として,食品照射は従来の食品と比べ安全な食品を提供することになるとしている.さらに,肉類については従来通り,USDA(US・Department of Agriculture:米国農務省)/FSIS(Food Safety And Inspection Service)が製品の検査,および工場の立ち入り検査を行う.もちろん,これらの照射工場は連邦政府の定める食肉加工工場としての衛生基準を満たさなければならず,HACCP規制の対象である.これに付け加えて,食品の健全性を確保し,その工場に要求されている微生物数の減少を確かめるために,微生物学的な検査を実施している.  食肉を照射線処理する食品工場は,他の食肉工場と同様に検査に合格しなくてはならない.  さらに,NRC(National Regulatory Commission:原子力規制委員会)OSHA(Occupational Safety and Health Administration:労働安全衛生局)はすべての放射線利用施設に対して規制を行っている.食品照射工場において,ガンマ線源を使用して食品を処理する工場はこれらの機関の定める基準を満たさなくてはならないとしている.しかし,NRCやOSHAの事務所のないところでは州政府がこの規制を行っている.
    
    
   ④ アメリカなどにおける照射食品の表示義務  
WHOの国際食品規格をはじめとして,US・FDAやFSISなどの規制でも放射線処理された食品はその旨をわかりやすく,その包装に表示しなければならないことが明記されている.有名な“ラデュラマーク”(下図参照)か,“照射処理”または“照射済み”の文言を記載する義務がある.照射処理された肉類などが肉加工食品,たとえばポークソーセージなどの原料として用いられる場合にも,原料として“照射済み豚肉”を記載する義務がある.商品名に“照射済み”の内容が含まれている場合はそのような表示の義務はないが,ラデュラマークを表示しなければならない.有機野菜など食品を“有機”食品として扱う場合は,照射してはならない.
  
   ⑤ 最近のアメリカの動向  
クリントン政策の健康政策により,より安全な食品を求める傾向がいっそう強まっていて,これを受けさまざまな食品に対する照射を求める請願が政府に寄せられている.  
  米国では,従来からGMP,HACCP,FOOD CODEなどを定め,安全な食品を供給に努力がなされている.たとえば,HACCPは多くの期待をもって受け入れられ,多くの食品においてはそれなりの成果をあげつつある.しかしながら,このような従来型の衛生対策の隙間を縫うように事故が発生する.  
  ジャックインポックス事故で有名になったハンバーグなどを原因食材とする病原性大腸菌O-157による食中毒,さらに食中毒原因菌の4分の3を占めるサルモネラ菌による鶏肉,鶏卵などが媒介する食中毒が後を絶たない.死亡原因をみても3分の1はサルモネラ菌による食中毒とされ,O-157は2%といわれている.また原因食材については,生食野菜,サラダなどによる食中毒が原因で,食習慣の変化に伴い減ることはないようだ.  
  このような事故を防ぐために,O・157汚染の恐れがある挽肉を2500ポンド回収したハドソンフードは,倒産の危機に直面したといわれている.  
  このような情勢の中,アメリカ食品加工協会など各種食肉製造業者や食品製造加工業者の団体,アメリカ医学会,アメリカ食糧協会などの学術団体,アメリカ農務省,FDAの疾病管理センターなど連邦政府の機関,ミネソタ州アイオワ州などの州政府が照射食品を推奨している.  
  これを受けて,アイソメデックス社は食肉照射の許可申請をし,これに1997年FDAが冷蔵肉に4.5KGy,冷凍肉7KGy照射の許可を与え,1999年USDA・FSISが許可した.  
  また,タイタン社がアイオワ州に10MeVの電子線照射装置を備えた食品専用の照射施設を建設し,冷凍倉庫会社のクローバーリーフ社と一緒に食品加工会社に照射肉を提供している.この工場は24時間操業しており,年間9万トンの処理能力をもっているといわれている.  
  1999年7月には1998年に申請の出されていた殻付き生鶏卵の照射をFDAが認めた.サルモネラ菌防除のために3kGyまでの照射が可能となっている.しかしながら,この許可文中でも3kGy照射すると,卵黄の変色,卵白の粘性の低下が著しく,自ずと利用に限界があるという.現在,調理済み食品の照射申請がFDAに出されており,これが認められると食品照射の範囲では極めて広くなる.(参考資料 都立産業技術研究所)