98     超純水  


    
  超純水とは,超LSIなどの半導体製造工程でシリコンウェハの洗浄や,医薬品の製造などに用いられ,金属イオンや微生物などの不純物をほとんど含まない,純度100%の理論的に水に限りなく近い高純度の純水のことである.  
  水はきれいなものというイメージがあるが,人口が密集し工業が発達してきた現在では,水の汚染がかなり広がっている.川を流れた水は,浄水場で処理されて一般家庭や工場などに送られるが,水道水にはいろいろなものが溶け込んでいるため,化学的には純粋な水ではない.  
  純水は,化学分析を行うとき,ビーカーなどの器具の洗浄や試薬の調整にも用いられる.人間が飲める水道の水でも,カルシウムや塩素などのイオンがごく微量含まれている.そして精密な分析や洗浄を行うとき,これらのイオンが不純物として悪影響を及ぼすことがあるのである.  
  水中に含まれる不純物の量を測定する一つの方法が,電気伝導率である.不純物が極めて少ないと電気伝導率は非常に小さくなる.水から電解質を取り除いていくと電気伝導率はどんどん小さくなっていくが,電解質を完全に取り除いたとしても電気伝導率は0にはならない.水の分子自体が ほんの極微量だけH+とOH-にイオン化するからである.このときの理論的に考えられる全く純粋な水の電気伝導率は0.054 79μS/cm(25 ℃)で,電気抵抗率で18.25×106Ωcmであり,完全な絶縁体であるともいえる.  
  表1に各種の水の電気伝導率を示す.  


   表1 水の電気伝導率(25 ℃)
理論純水
0.054 79    μS/cm
超純水
0.06    μS/cm 以下
純 水
1    μS/cm 以下
蒸留水
10〜1    μS/cm
水道水
200〜100    μS/cm
おいしい水
700〜400    μS/cm

  また,水の酸性度を調べるのにpHを使うが,pHはH+とOH-の関係で含有比率が1:1ならpH7になる.純水はpH7だが,大気中の炭酸ガスが溶け込むとpHは約5.4〜5.7(弱酸性)になる.  
  純水の製造方法をみてみると,純水製造装置には,蒸留法を利用した加熱タイプと,イオン交換法を使う非加熱タイプがある.最近はイオン交換法が主流で,小型の非加熱タイプも多く使われている.  
  純水の重要な性質の一つは,物質を溶解する力が大きいことである.純水の製造装置の接液部の多くに不純物の溶出が少ないプラスチック材料が使われているのはこのためである.一般の水道水の配管に用いられている鉄管や鉛管は使用できない.ステンレス管でも,使う場合は洗浄し,表面処理を施して使われる.  
  表2に不純物と除去方法を示す.


   表2 不純物と処理方法
処理方法電解質有機物微生物微粒子
イオン交換
   
蒸 留
活性炭ろ過
 
  
紫外線殺菌
  
 
フィルターろ過
 
○…除去可能
 
  純水は,ミネラル成分が何も入っていないので飲んでもおいしく感じられないし,たくさん飲むと歯のカルシウムを溶かすので,飲用には適さない.
  参考文献;Truman S. Light:Analytical Chemistry,56(7),1138(1984).