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VOC(Volatile Organic Compounds)
                             


 VOC(Volatile Organic Compounds)とは,揮発性を有し大気中でガス状となる有機化合物の総称である.
 代表的な物質としては,トルエン,キシレン,酢酸エチル,ベンゼン,ホルムアルデヒドなどで約200 種類ある.用 途としては,揮発しやすいことや親油性などの特徴を生かして,塗料,接着剤などの溶剤または洗浄剤など広く利用さ れている.
 VOC には国際的にコンセンサスが得られている定義はないが,WHO(World Health Organization :世界保健機構)が 規定している分類方法が最も一般的に用いられており,以下のように沸点で分類されている.

 
表1 WHO によるVOC の分類
沸 点名 称VOC の例と沸点
50 ℃未満高揮発性有機化合物(VVOC)
Very Volatile Organic Compounds
メタン(-161 ℃),ホルムアルデヒド(-21 ℃),メチルメル カプタン(6 ℃),アセトアルデヒド(20 ℃),ジクロロメタン (40 ℃)
50 ℃以上
260 ℃未満
揮発性有機化合物(VOC)
Volatile Organic Compounds
酢酸エチル(77 ℃),エタノール(78 ℃),ベンゼン(80 ℃), メチルエチルケトン(80 ℃),トルエン(110 ℃),トリクロロエタン(113℃) ,キシレン(140℃),リモネン(178℃),Lニコチン(247 ℃)
260 ℃以上
400 ℃未満
半揮発性有機化合物(SVOC)
Semivolatile Organic Compounds
クロルピリホス(290 ℃),フタル酸ジ-n-ブチル(340 ℃), フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(390 ℃)
400 ℃以上粒子状有機化合物(POM)
Particulate Organic Matter
PCB,ベンゾピレン

 
VOC の規制について
 VOC は,浮遊粒子状物質(SPM)や光化学オキシダントの原因物質のひとつであり,大気汚染の原因となること, 建築内装に使用される接着剤にふくまれるホルムアルデヒドによるシックハウス症候群のように健康被害の原因になる ことなどから,使用や排出が規制される.
 国際的な取組みとしては,気候変動枠組条約(UNFCCC)に基づき,毎年,各国政府は,京都議定書による削減対 象の温室効果ガス(二酸化炭素等6 種類)および関連ガス(NOx,CO,VOC,SO2)の排出量等を報告することとなっ ている.
 また,国内の主な取組みや規制として,以下のようなことがある.
 1. 大気汚染防止法(2006 年4月改正)
 法規制と事業者の自主的な取組みとの適切な組み合わせ(ベストミックス)による効果的なVOC 排出抑制という考 え方で,以下のことなどが決められた.
 ① 一定規模より大きいものを法規制の対象施設として,都道府県への届出を義務化
 ② VOC 排出対象施設に対して,排出口における排出濃度基準の遵守を義務付け
 ③ VOC 排出の対象施設より規模の小さいところは事業者の自主的な排出削減の取組みに任せる
 また,VOC 排出量の目標数値および期限は,平成22 年度を目途に,事業所(固定発生源)でのVOC 発生量を平成12 年度より3 割削減することとなっている.
 
 2. 自動車からの炭化水素の排出規制
 
 3. VOC の室内濃度に関する指針値
 厚生労働省「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会」において,ホルムアルデヒドをはじめとする13 物質の室内濃度指針値を策定.
 
 VOC 排出抑制対策の方法として,冷凍空調技術に関連する例を以下に示す.
 ① 局所排気設備と処理設備を設け分解処理を行う.処理方法は,燃焼法,吸着法,洗浄法,生物分解法,プラズマ分 解法などがある.この処理設備へVOC を回収するために局所排気設備が利用される.
 ② 建築内装からの発生に対して,24 時間換気運転の換気設備を設ける.
 ③ 圧縮深冷凝縮法による回収・再生:発生VOC の吸引と加圧を兼ねるコンプレッサーならびに加圧ガスを凝縮する 凝縮部および回収したVOC と水を分離する水分離器などで構成される装置で,発生したVOC を加圧冷却することに より液化回収し,さらに活性炭吸着により吸着処理も行う方法.この深冷凝縮工程(液化回収)には,冷凍機による -30 ~-40 ℃の冷熱源を必要とする.
 
 言葉の説明
 浮遊粒子状物質(SPM):大気中に浮遊する粒子状物質であって,その粒径が10 マイクロメートル以下のものをい う.ボイラーや自動車の排出ガスなどから発生するもので,大気中に長時間滞留し,高濃度で肺や気管などに沈着して 呼吸器に影響を及ぼす危険がある.
 
 光化学オキシダント:オゾン,パーオキシアセチルナイトレート,その他の光化学反応により生成される酸化性物質 をいい,大気中の窒素酸化物やVOC が太陽の紫外線を受けて化学反応を起こし発生する汚染物質で,光化学スモッグ の原因となり,高濃度では粘膜を刺激し呼吸器への影響を及ぼすほか,農作物など植物への影響も観察されている.
 
文 献

環境省ホームページ http://www.env.go.jp/air/osen/voc/voc.html

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