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エネルギーとエクセルギー
地球環境の保護がまさに地球規模の重要課題となっている.7 月の洞爺湖サミットにおいても,2050 年までに温室効 果ガスの排出量を50 %に抑制するとの長期目標が確認された.私たちの身近でも,空調の温度設定を夏は28 ℃,冬は 20℃としてエネルギー消費量の削減を図ったり,省エネ家電製品が普及するなどして,省エネルギーやエネルギー消費 の削減に対する意識が高まっている.
ところで,「エネルギーを消費する」「エネルギー消費量を削減する」とはどういうことであろうか.エネルギーはな くなってしまうものなのか? ここで,熱力学の第1 法則として有名な「エネルギー保存則」があるが,これによれば, 運動エネルギーや熱エネルギー,電気エネルギー,化学エネルギーなど,様々なエネルギーはその形を変えても,ある 系内にある全エネルギー量は保存され,増えもしなければ減りもしないはずである.すなわち,エネルギーは消費され ない.
しかし,現実にはエネルギーは使えばなくなるということをわれわれは実感している.石油を燃やして発電し,その 電力を消費することによって,石油資源は減少している.太陽エネルギーを温水に変えたり,電気に変えて蓄えても,そ れを使えば温水は最終的に周囲と同じ温度の水になり,蓄電池に蓄えた電力は消費されて電圧がなくなってしまう.
実は,このような使えばなくなってしまうエネルギーを表す概念を「エクセルギー」と呼んでいる.またの名を「有効 エネルギー」ともいう.すなわち,全エネルギーをわれわれが利用できるエネルギーと利用できないエネルギーに分け, 利用できるエネルギーを「エクセルギー」と呼んでいるのである.
周囲の温度と等しい常温の水はその温度に対応したエネルギーを持っているが,われわれはこの水からエネルギーを 取り出すことはできない.周囲の温度と異なって初めて,その水からエネルギーを取り出すことができるのである.エ クセルギーは,ある系が周囲と平衡状態に達するまでに取り出すことのできる最大の仕事量(エネルギー)のことをい う.
熱力学の第2法則によれば,一定温度の一つの熱源から仕事を取り出すことはできない.高温と低温の2つの熱源があ って初めて仕事を取り出すことができ,取り出すことのできる最大の仕事はカルノーサイクルによるものであり,次式 で表される.
L
=
η
C
・
Q
H
=(1 −
T
L
/
T
H
)・
Q
H
L
:得られる仕事量(エネルギー),
Q
H
:高温熱源から入力した熱量
η
C
:カルノーサイクル熱効率,
T
L
:低温熱源温度,
T
H
:高温熱源温度
上式によれば,2つの熱源温度の差が大きければ大きいほどカルノーサイクル熱効率ηC は大きくなり,取り出すこと のできる仕事量(エネルギー)は大きくなる.高温熱源温度が周囲温度すなわち低温熱源温度と等しくなれば,取り出 すことのできる仕事量は0,すなわちエクセルギーは0 となる.
すなわち,高温の熱源からエネルギーを取り出して発電した場合,発電した電力は様々な仕事に使われて最終的には 熱として放出され,発電するときに出る排熱と合わせてトータルのエネルギー量は高温熱源が持っていたエネルギー量 と変わらないが,低温排熱のエクセルギーは小さくなっており,われわれが利用することのできるエネルギーは減少し てしまっているのである.
結局,省エネルギーは省エクセルギーのことである.エクセルギーの観点からエネルギーの流れを捉えて,エネルギ ー源の持つエクセルギーを無駄なく使い切ることが,今後ますます重要になってくると思われる.
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